社名の由来


「Jeane(ジーン)」の社名は、「Zine(ジン)」という日本でいうところの「ファンジン(Fanzine/同人誌)」に由来しています。

現代美術の編集者、写真家として知られる都築響一さんの著作で「圏外編集者」という本があるのですが、その中で紹介される「Zine」にまつわるエピソードに感銘を受けたことがきっかけです。

以下、少々長いのですが、そのエピソードをご紹介します。

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本を作る上で重要なのは、技術じゃなくて、この本を作りたいという思いの強さだけだ。

世界最大の出版見本市であるフランクフルト・ブックフェアを訪れたときのこと。
その年はソ連崩壊直後で、厳しい統制下にあったソ連時代の地下出版物を集めた展示が行われていた。
反体制の政治的な雑誌や発禁文学本に混じって、会場のすみにロック系の地下出版物を並べているロシア人の男がいた。
いかにも手作り風の1冊(「ローリングストーンズ・ファンクラブ」の会報だった)を指して、「これいくら?」と聞くと、限定5部だから売れないという。
限定なんてロックっぽくないな、と思ったら、そうじゃなかった。
当時のロシアは印刷機どころかコピー1枚取るにも上司の許可が必要で、自費出版なんてとてもできる状況じゃなかった。
じゃあ、そのロシア人はどうやってその本を作ったのかというと、手動のタイプライターに紙とカーボン紙を交互に挟んで、力いっぱい打つと5部ぐらいは何とかいけるんだ、と平然と説明された。
僕はなんと言っていいのかわからなくなった。
結局、その本は諦めて、これなら売ってもいいという本を買ったのだが、それもタイプで打った原稿を写真で撮ってプリントしたものをホチキスで留めてるだけの本だった。
もちろん印刷みたいに読みやすくはないけど、でも読める。読もうと思えば。

自分がどうしても読みたいけど、その本が世の中には存在しない。
かといって、誰かを説得して作ってもらう能力や財力は持っていない。
でも、意欲だけは誰よりもある。
この強い意志が、タイプを叩く力になって「モスクワ・ローリングストーンズ・ファンクラブ会報」は世に生まれたのだった。

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都築響一著「圏外編集者」より。
※文章は紹介にあたって短く編集してあります。


思いの強さが事業を創る。
そんな意味を社名に込めたいと考えました。
「Zine」では出版のイメージが強いので、意味を限定せず、いろんなことにチャレンジできるよう、音(おと)だけ活かして「Jeane」としました。

強い思いを共有できる、多彩な才能が集まる場所。
そんな場所になるよう、願って付けた社名です。


株式会社ジーン代表 林田洋明